2000年に、SolarisやWindows向けのドライバを開発するところからスタートしました。サーバとETERNUSを複数のパスでつなぎ、高信頼・高性能を実現するマルチパスドライバです。その後、MicrosoftやVMwareなどが提供する管理ツールと富士通のストレージを連携させるためのプラグイン開発が増えてきて、現在に至ります。
VMwareやMicrosoftなどのベンダーとプラグイン開発のための調整や開発のとりまとめなどを担当しています。プラグインには、例えばVMwareマルチパスのパスフェイルオーバ機能をETERNUS ディスクアレイに最適化して信頼性を向上させる「VMware Multi-Pathing plug-in for ETERNUS」や、Windows ServerからETERNUSのアドバンスト・コピー機能を利用可能にする「ETERNUS VSS Hardware Provider」などがあります。
「ETERNUS vCenter Plug-in」の開発と保守です。VMwareの仮想化環境ではVMware vSphere Client/Web Clientというソフトウェアで仮想化環境上のリソースを管理します。しかし、そのままでは直接ETERNUS ディスクアレイを管理することはできません。ETERNUS vCenter Plug-inを導入することで、VMware vSphere Client / Web Client の画面からETERNUS ディスクアレイのボリュームを作成し、情報を表示することが可能になります。
開発のとりまとめを行っています。担当は「ETERNUS Oracle VM Storage Connect Plug-in」です。Oracle VMはOracleが提供する無償のサーバ仮想化ソフトウェアで、仮想化環境はOracle VM Managerというソフトウェアで管理します。ETERNUS Oracle VM Storage Connect Plug-inをインストールすれば、Oracle VM Managerの画面からETERNUS ディスクアレイのボリュームを作成し、そのボリュームを仮想サーバに割り当てたり、コピーを作成したりすることが可能になります。
それ以外にも、ETERNUS ディスクアレイの機能をストレージ基盤ソフトウェア ETERNUS SFで利用できるように、ETERNUS SF向けのAPI(Application Programming Interface)開発のとりまとめも担当しています。
ツール名 | 連携 | ダウンロード | 役割 |
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ETERNUS Oracle VM Storage Connect Plug-in | Oracle VM連携 | 無料 | Oracle VM Manager経由でのETERNUS ディスクアレイの管理が可能 |
ETERNUS vCenter Plug-in | VMware連携 | 無料 | VMwareの仮想化環境において、ETERNUS ディスクアレイのボリューム情報を表示。VMware vSphere Client/ Web Clientのユーザーインターフェースを拡張 |
ETERNUS VSS Hardware Provider | Microsoft連携 | 無料 | Windows ServerからETERNUSのアドバンスト・コピー機能の利用が可能。Microsoft Volume Shadow Copy Service(VSS)をサポート |
さまざまなリソースを管理するサーバの負荷は増大傾向にあります。そのため、ストレージ管理をサーバ側の機能で行うのではなく、ストレージ側の機能を利用したいというニーズがあります。
ストレージ基盤ソフトウェアであるETERNUS SFを導入すればETERNUS ディスクアレイの機能をフルに活用できますが、通常はサーバOSから直接ETERNUSの機能を呼び出すことはできません。WindowsやVMwareなどからETERNUSの機能を直接利用できるように、橋渡しの役割を果たすプラグインの必要性が高まってきていることが、プラグインを提供している理由です。
またお客様の中には、ベンダー固有の管理ソフトウェアを導入していても、できれば標準的なコンソール(VMwareでいえばvSphere Client)のみで仮想環境のサーバやストレージを一元的に管理したいというニーズがあります。プラグインを提供することで複数の管理インターフェースを切り替えて使用する必要はなくなり、シングルコンソールで管理することができます。このように、利用する側の視点に立って利便性を高めたいという点も理由の一つです。
市場の動向やニーズを調査し、どのソフトウェアに対してどのようなプラグインが必要かを検討して開発しています。新規にプラグインを開発した後、対象ソフトウェアに機能が追加されれば、プラグイン側もそれに対応して機能拡張を行います。またSymantecやVMwareなど、3rd party向けのストレージ連携プログラムを提供している場合もあります。各種プログラムに積極的に取り組み、そのベンダーと密に連携してプラグインを開発するケースもあります。
VMwareの場合は、新機能のリリースに関する大まかなスケジュールを教えてもらえるため、それに合わせてプラグインの追加機能をリリースしていきます。新機能の仕様を調査し、どのような追加機能が必要か検討して開発を行います。
Oracle社とIAサーバ事業部、われわれストレージ事業部で定期的にミーティングを実施しています。新機能の追加がなくても、Oracle VMなど対象ソフトウェアがバージョンアップした際にはプラグインをテストして問題なく動くことを確認するなど、適宜、情報共有をはかりながら開発を進めています。
また、ETERNUSに新しい機能が搭載され、プラグインでその機能を利用する場合には、新規にAPIを開発して、ETERNUS SFの担当チームに提供します。
プラグインは海外でも提供しているので、欧州の富士通テクノロジー・ソリューションズからよく問い合わせがあり、また、トラブルが発生したときのベンダーとのやり取りは、日本法人ではなく米国の開発チームとすることもあります。そうした中で言語や文化の違いからか、こちらの意図がうまく伝わらなかったり返事がなかなか来なかったりといったことが起こり、当初は正直戸惑いました。少しずつ慣れてきた最近では、粘り強く意図を伝えた際の達成感や日本だけでなくグローバルで利用されるソフトウェアの開発にやりがいを感じています。
ETERNUS SF向けのAPI開発では、スケジュールの調整に苦労する場合があります。ETERNUSのハードウェアとソフトウェアはほぼ並行して開発が進められます。ETERNUSに新しい機能が搭載された場合、ソフトウェア開発にはハードウェアの機能を利用するためのAPIが必要になるため、いち早くAPIを開発して提供しなければ開発全体のスケジュールに遅れが出る可能性があります。ETERNUS SF向けのAPIはハードウェアとソフトウェアの仲介役に当たるので、ハードウェア、ソフトウェアの双方のチームと連絡を取り合うことで、スムーズに開発が進むように連携を高めています。
限られた開発リソースの中でも、多種多様なプラグインを他社に先駆けていち早くリリースすることが求められます。そのためアジャイル開発手法(迅速にソフトウェアを開発するための軽量な開発手法のこと)などを導入し、開発リードタイムをできるだけ短縮することに努めています。最近では、「VMware vSphere Web Client」という新しいGUI向けのプラグインを早期開発し、その結果、米国で2012年8月に開催されたVMworld 2012というカンファレンスで、いち早くWeb Clientに対応したメーカーの一つとして富士通を紹介していただけたのです。海外の大きなカンファレンスで評価され、大きな意義があったと嬉しく感じました。
プラグインは無償で提供しており、お客様の判断でダウンロード・インストールし、利用するという形式です。ただ、現状のままでは、プラグインを十分に活用していただけないのではと考えています。プラグインの無償提供に加え、利用方法の相談受けや、トラブルへの24時間対応など、お客様を手厚くサポートできる仕組みを検討しています。
また、無償提供でも、有償ソフトウェアと同様に、部内で十分なテストを行ってからさらに品質保証部で評価を行うことで、品質を担保しています。そのぶん、提供までに少し時間がかかることが課題であると感じています。評価工程を効率化し、お客様に少しでも早く提供できるように関連部署間で調整していく考えです。
今までGUI画面の開発の経験がなく、ETERNUS vCenter Plug-inは、ETERNUS SFやVMwareの既存のGUI画面を参考に、画面レイアウトのどこにボタンがあれば違和感なく使えるかを考えて開発してきました。さらに快適に活用していただくためには、自分たちが開発しているプラグインがどのような人にどのように使われているかをもっと知ることも重要だと捉えています。今後も、お客様がより使いやすいように操作性などを心掛けて開発を行っていきたいです。
プラグインは、ETERNUS ディスクアレイの導入時にインストールしてもらうことを想定して開発しています。しかし、プラグインの存在が十分に知られていません。そのため、プラグインをもっと周知させるために、サーバ接続ガイドにプラグインとその利用方法を記載したり、ETERNUS ディスクアレイの資料で紹介したりすることで露出を増やすようにしています。この機会にどのようなプラグインがあるかを知っていただけると嬉しいです。
また、これまでは国内や海外市場のニーズに応じてプラグインを開発してきました。今後はそれだけでなく、自ら新しい企画を考えて提案・製品化していき、お客様の要望に応えた製品を開発していきたいと思っています。
(注)取材日:2013年4月25日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日、または公開日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
掲載日:2013年6月17日