ストレージ自動階層制御
ETERNUS DXは、ETERNUS SF Storage Cruiserの自動階層制御機能を使用して、業務の状況変化に応じて運用中に自動的にデータ配置を変更します。ETERNUS SF Storage Cruiserではモニタリングした性能情報を元にデータの再配置を決定します。ETERNUS DXはFlexible Tier機能を使用し、ETERNUS SF Storage Cruiserの指示に応じて、装置内のデータを移動します。
Flexible Tier機能では、アクセス頻度に応じてETERNUS DX内のデータを自動的に再配置することによって性能とコストを最適化します。アクセス頻度の高いデータはSSDのような、より高速なドライブへ移動し、アクセス頻度が低いデータはより大容量で低価格なディスクへ移動して、ストレージの階層化(SSD、SASディスク、ニアラインSASディスク)を実施します。データの移動はボリュームよりも小さいブロック単位(252MB)で行えます。
チャンクサイズに応じてデータの移動単位は変わります。チャンクサイズとデータの移動単位の関係を以下の表に示します。
チャンクサイズ |
移動単位 |
---|---|
21MB |
252MB |
42MB |
504MB |
84MB |
1,008MB |
168MB |
2,016MB |
336MB |
4,032MB |
672MB |
8,064MB |
1,344MB |
16,128MB |
ストレージ自動階層制御を使用すると、性能を維持したままニアラインSASディスクを活用できるため、導入コストの削減が可能です。
また、データは自動的に再配置されるため、管理者のストレージ性能設計の負荷を削減できます。
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Flexible Tierは、複数のRAIDグループから構成するプール(Flexible Tier Sub Pool:FTSP)と、そのプールを階層化してより大きなプール(Flexible Tier Pool:FTRP)を使用します。Flexible Tierで使用されるボリュームは、Flexible Tier Volume(FTV)と呼びます。
Flexible Tier機能を使用するための設定および運用管理は、ETERNUS SF Storage Cruiserから行います。詳細は、『ETERNUS SF Storage Cruiser 運用ガイド Optimization オプション編』を参照してください。
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Flexible Tier Pool(FTRP)
FTRPとは、階層化対象のFTSPの管理単位のことです。1つのFTRPにFTSPを最大3個登録できます。これは階層が最大3層であることを示します。
FTRP内のFTSPごとに優先順位を設定できます。頻繁にアクセスされるデータは、優先順位が高いFTSPに格納されます。FTSPはTPPとリソースを共有するため、TPPが作成されていると作成可能な最大FTSP数は減少します。
データを暗号化する場合は、FTRP作成時にプールに暗号化指定するか、自己暗号化ドライブ(SED)を使用してFTSPを作成します。
Flexible Tier Sub Pool(FTSP)
FTSPは1つ以上のRAIDグループで構成されます。FTSPの容量を拡張する場合は、RAIDグループ単位で追加できます。追加するRAIDグループの仕様(RAIDレベル、ドライブタイプ、メンバードライブ数)は、既存のRAIDグループと同じにしてください。
装置に登録できるFTSPの最大数および最大容量を以下の表に示します。
表: FTSPの最大数および最大容量 項目
ETERNUS DX600 S6
ETERNUS DX900 S6
ETERNUS DX8900 S6
Flexible Tier Pool最大プール数
64
64
Flexible Tier Sub Pool最大プール数(*1)
256
256
Flexible Tier Sub Pool最大プール容量(*2)
98,304TB
(96PB)
524,288TB
(512PB)
Flexible Tierボリューム総容量(*3)
98,304TB
(96PB)
524,288TB
(512PB)
*1 : シン・プロビジョニングプール数とFTSP数を合わせた数の最大値となります。
*2 : 装置内のFTSPの容量とシン・プロビジョニングプールの容量を合わせた最大プール容量です。また、FTRPの最大プール容量もFlexible Tier Sub Pool最大プール容量と同様になります。
*3 : Flexible Tier Sub Pool最大プール容量と同様になります。ただし、装置内の構成可能な物理容量によります。
NoteETERNUS DX8900 S6の場合、Flexible Tierの評価を同時に実行できるFTRPの使用容量の合計値に制限があります。詳細は、ETERNUS SF Storage Cruiserのマニュアルを参照してください。
FTSPに登録可能なRAIDレベルと構成はTPPと同様です。FTSPに登録可能なRAID構成を以下の表に示します。
表: FTSPに登録可能なRAIDレベルと構成 RAIDレベル
設定可能ドライブ数
推奨構成
RAID0
4 (4D)
—
RAID1
2 (1D+1M)
2 (1D+1M)
RAID1+0
4 (2D+2M)、8 (4D+4M)、16 (8D+8M)、24 (12D+12M)
8 (4D+4M)
RAID5
4 (3D+1P)、5 (4D+1P)、7 (6D+1P)、8 (7D+1P)、9 (8D+1P)、13 (12D+1P)
4 (3D+1P)、8 (7D+1P)
RAID6
6 (4D+2P)、8 (6D+2P)、9 (7D+2P)、10 (8D+2P)
8 (6D+2P)
RAID6-FR
13 ((4D+2P) ×2+1HS)、17 ((6D+2P) ×2+1HS)、
31 ((8D+2P) ×3+1HS)、31 ((4D+2P) ×5+1HS)
17 ((6D+2P) ×2+1HS)
Flexible Tier Volume(FTV)
FTVは、階層化対象のボリュームの管理単位です。FTVの最大容量は128TBです。ただし、FTVの総容量がFTSPの最大容量を超えないようにしてください。
FTVの作成時に、Allocation方式を選択できます。
Thin
ホストからFTVへの書き込みが発生した時点で、作成した仮想ボリュームへの物理領域の割り当てを行います。ストレージ容量を仮想化して割り当てることで、ストレージの物理容量を削減できます。
Thick
ボリューム作成時に、ボリュームの全領域に対して物理領域を割り当てます。システム域のボリュームなどに使用し、運用中のプール枯渇によるシステム停止を防止できます。
通常は「Thin」を選択することを推奨します。Allocation方式は、FTV作成後に変更することもできます。
「Thick」を「Thin」に変更した場合は、TPV / FTV容量最適化を実施してください。容量を最適化することでFTVに割り当てられていた領域が解放され、FTVが使用できるようになります。TPV / FTV容量最適化を実施しなかった場合、Allocation方式を変更してもFTVの使用量は変わりません。
FTVは、作成後に容量を拡張できます。
作成可能なFTV数については、ボリュームを参照してください。
使用容量の閾値監視
FTRPおよびFTVの使用率が閾値に達した場合、ETERNUS SF Storage Cruiserからアラームを通知できます。閾値には注意と警告の2種類があり、それぞれで値を設定することが可能です。
必ずFTRPが枯渇する前にドライブを増設して、ETERNUS SF Storage CruiserからFTSPの容量を拡張してください。
FTRPの閾値
FTRP単位の閾値には、注意と警告の2段階の設定があります。
表: FTRPの閾値 閾値
設定範囲
初期状態
設定条件
注意
5(%)~80(%)
75(%)
注意£警告
注意閾値は省略可
警告
5(%)~99(%)
90(%)
FTVの閾値
FTV単位の閾値は注意の1種類だけです。FTVの未割り当て領域の容量分が、プールの空き容量にない場合にアラーム通知を行います。FTSPの空き容量と対象FTVの未割り当て容量との比率を閾値として設定します。
表: FTVの閾値 閾値
設定範囲
初期状態
注意
1(%)~100(%)
80(%)
Flexible Tier機能を有効にした時点で作業用ボリューム(物理容量は0MB)が64個作成されます。装置内の最大作成可能ボリューム数の上限は、この作業用ボリュームの数の分だけ少なくなります。
FTSPまたはFTRPに登録されたRAIDグループに、アドバンスト・フォーマットのドライブで構成されたRAIDグループが1つでも存在する場合、アドバンスト・フォーマットに対応していないOSやアプリケーションからその作成したFTVにアクセスすると、書き込み性能が低下することがあります。
VVOLとして使用可能なFTRPの容量は、シン・プロビジョニングの最大プール容量とは異なります。詳細は、VMware VVOLを参照してください。