ストレージ容量の仮想化

シン・プロビジョニングは、物理ドライブをプールで管理し、未使用容量をプールに属する仮想ボリュームで共有することでドライブの使用効率を向上します。サーバから見えるボリューム容量を仮想化し、物理ボリューム容量以上の容量をサーバに見せることができます。大容量の仮想ボリュームを定義できるためドライブを効率よく柔軟に使用できます。

容量設計が困難な場合でも少ないドライブ容量で業務を開始できるため、初期投資を抑制できます。また、実装するドライブ数が少なくなるため、消費電力も削減できます。

図: ストレージ容量の仮想化

シン・プロビジョニングでは、複数のドライブで構成されるRAIDグループをシン・プロビジョニングプール(TPP)として管理します。ホストからの書き込みが発生した時点で仮想ボリュームに物理領域を割り当てます。TPPの空き容量はTPPに属する仮想ボリュームで共用し、装置に搭載されたドライブ容量を超える仮想ボリュームを作成できます。TPP内に作成する仮想ボリュームをシン・プロビジョニングボリューム(TPV)と呼びます。

  • シン・プロビジョニングプール(TPP)

    TPPは、1つ以上のRAIDグループから構成される物理ドライブプールです。TPPの容量を拡張する場合は、RAIDグループ単位で追加できます。追加するRAIDグループの仕様(RAIDレベル、ドライブタイプ、メンバードライブ数)は、既存のRAIDグループと同じにしてください。

    装置に登録できるTPPの最大数および最大容量を以下の表に示します。

    表: TPPの最大数および最大容量

    項目

    ETERNUS DX600 S6

    ETERNUS DX900 S6

    ETERNUS DX8900 S6

    最大プール数(*1)

    256

    256

    最大プール容量(*2)

    98,304TB

    (96PB)

    524,288TB

    (512PB)

    *1

    シン・プロビジョニングプール数とFTSP数を合わせた数の最大値となります。

    *2

    装置内のシン・プロビジョニングプールの容量とFTSPの容量を合わせた最大プール容量です。

    TPP作成時に決定するTPPのチャンクサイズを以下の表に示します。

    表: TPP設定容量に対するチャンクサイズ

    最大プール容量の設定値

    チャンクサイズ(*1)

    ETERNUS DX600 S6

    ETERNUS DX900 S6

    ETERNUS DX8900 S6

    ~1,536TB

    ~8,192TB

    21MB

    98,304TB

    (96PB)(*2)

    524,288TB

    (512PB)(*2)

    1,344MB(Deduplication有効またはCompression有効の場合、初期値は21MBになります。)

    *1

    チャンクサイズは、データを区切る大きさのことです。最大プール容量の大きさによって、チャンクサイズが自動設定されます。

    *2

    最大プール容量が512PB(ETERNUS DX600 S6の場合、96PB)に設定されている場合は、Pool作成時にチャンクサイズを手動で設定することができます。設定可能なチャンクサイズおよび作成可能なTPP容量は、以下のとおりです。

    チャンクサイズ

    作成可能なTPP容量

    ETERNUS DX600 S6

    ETERNUS DX900 S6

    ETERNUS DX8900 S6

    21MB

    1.5PB

    8PB

    42MB

    3PB

    16PB

    84MB

    6PB

    32PB

    168MB

    12PB

    64PB

    336MB

    24PB

    128PB

    672MB

    48PB

    256PB

    1,344MB

    96PB

    512PB

    暗号化する場合は、TPP作成時にファームウェアによる暗号化を指定するか、TPP作成時に構成するドライブとして自己暗号化ドライブ(SED)を選択します。

    TPPに登録可能なRAID構成を以下の表に示します。

    表: TPPに登録可能なRAIDレベルと構成

    RAIDレベル

    設定可能ドライブ数

    推奨構成

    RAID0

    4 (4D)

    RAID1

    2 (1D+1M)

    2 (1D+1M)

    RAID1+0

    4 (2D+2M)、8 (4D+4M)、16 (8D+8M)、24 (12D+12M)

    8 (4D+4M)

    RAID5

    4 (3D+1P)、5 (4D+1P)、7 (6D+1P)、8 (7D+1P)、9 (8D+1)、13 (12D+1P)

    4 (3D+1P)、8 (7D+1P)

    RAID6

    6 (4D+2P)、8 (6D+2P)、9 (7D+2P)、10 (8D+2P)

    8 (6D+2P)

    RAID6-FR

    13 ((4D+2P) ×2+1HS)、17 ((6D+2P) ×2+1HS)

    31 ((8D+2P) ×3+1HS)、31 ((4D+2P) ×5+1HS)

    17 ((6D+2P) ×2+1HS)

  • シン・プロビジョニングボリューム(TPV)

    TPVの最大容量は128TBです。ただし、TPVの総容量がTPPの最大容量を超えないようにしてください。

    TPVの作成時に、Allocation方式を選択できます。

    • Thin

      ホストからTPVへの書き込みが発生した時点で、作成した仮想ボリュームに物理領域を割り当てます。割り当てられる容量サイズ(チャンクサイズ)は、TPVを作成する際に指定したTPPのチャンクサイズとなります。ストレージ容量を仮想化して割り当てることで、ストレージの物理容量を削減できます。

    • Thick

      ボリューム作成時に、ボリュームの全領域に対して物理領域を割り当てます。システム領域のボリュームなどに使用し、運用中のプール枯渇によるシステム停止を防止できます。

    通常は「Thin」を選択することを推奨します。Allocation方式は、TPV作成後に変更することもできます。

    「Thick」を「Thin」に変更した場合は、TPV / FTV容量最適化を実施してください。容量を最適化することでTPVに割り当てられていた領域が解放され、TPVが使用できるようになります。TPV / FTV容量最適化を実施しなかった場合、Allocation方式を変更してもTPVの使用量は変わりません。

    TPVは、作成後に容量を拡張できます。

    作成可能なTPV数については、ボリュームを参照してください。

使用容量の閾値監視

TPPの使用率が閾値に達した場合、「イベント通知設定」機能で設定した宛先(SNMPトラップ、メール、またはSyslog)に通知されます。閾値には注意と警告の2種類があり、それぞれで値を設定することが可能です。

また、ETERNUS SF Storage Cruiserによる使用容量の監視を行うこともできます。

  • TPPの閾値

    TPP単位の閾値には、注意と警告の2段階の設定があります。

    表: TPPの閾値

    閾値

    設定範囲

    初期状態

    設定条件

    注意

    5(%)~80(%)

    75(%)

    注意£警告

    注意閾値は省略可

    警告

    5(%)~99(%)

    90(%)

  • TPVの閾値

    TPV単位の閾値は注意の1種類だけです。TPVの物理割り当て量が閾値に達した場合、ホストにセンスで応答します。TPPの空き容量と対象TPVの未割り当て容量との比率を閾値として設定します。

    表: TPVの閾値

    閾値

    設定範囲

    初期状態

    注意

    1(%)~100(%)

    80(%)

Caution
  • ファイルシステム作成時、LUN全体にメタ情報を書き込むOSはシン・プロビジョニングの使用に適していません。

  • TPVのバックアップは、ファイル単位で行うことを推奨します。全面バックアップを行うとドライブへの未割り当て領域もダミーデータとしてバックアップされ、バックアップしたデータをTPVにリストアするとダミーデータもリストアされます。そのため、全ボリューム容量分のドライブの割り当てが必要になり、シン・プロビジョニングの効果がなくなります。

  • 高度な性能チューニングを行う場合は、TPPではなく、通常のRAIDグループを使用してください。

  • 各プラットフォーム(サーバ側OS)の種類や版数によっては、拡張したボリュームを認識できない場合があるため、動的に容量を拡張する場合は、事前に各OSおよびファイルシステムのマニュアルを参照してください。

  • TPPにアドバンスト・フォーマットのドライブで構成されたRAIDグループが1つでも存在する場合、そのTPPに作成されるTPVはすべてアドバンスト・フォーマットとして扱われます。アドバンスト・フォーマットに対応していないOSやアプリケーションからそのTPVにアクセスすると、書き込み性能が低下することがあります。