ONTAP 9.13

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FabricPool階層化ポリシーについて

FabricPool階層化ポリシーを使用すると、データがホットまたはコールドになったときに階層間でデータを効率的に移動できます。階層化ポリシーの概要を理解することで、ストレージ管理のニーズに応じた最適なポリシーを選択できます。

FabricPool階層化ポリシーの種類

FabricPool階層化ポリシーは、FabricPool内のボリュームのユーザー データ ブロックをクラウド階層に移動するかどうかおよびそのタイミングについて、ボリュームの「温度」がホット(アクティブ)であるかコールド(非アクティブ)であるかに基づいて決定します。ボリュームの「温度」は、アクセス頻度が高いと上がり低いと下がります。一部の階層化ポリシーには階層化の最小クーリング期間が関連付けられています。最小クーリング期間は、FabricPoolボリュームのアクセスされていないユーザー データを"`コールド`"とみなしてクラウド階層に移動するまでの期間です。

コールドとして識別されたブロックは、階層化の対象としてマークされます。毎日のバックグラウンド階層化スキャンはコールドブロックを検索します。同じボリュームから十分な4KBブロックが収集されると、それらは4MBオブジェクトに連結され、ボリューム階層化ポリシーに基づいてクラウド層に移動されます。

all 階層化ポリシーを使用するボリューム内のデータは、すぐにコールドとしてマークされ、できるだけ早くクラウド層への階層化が開始されます。毎日の階層化スキャンの実行を待機する必要はありません。

volume object-store tiering show コマンドを使用して、FabricPoolボリュームの階層化ステータスを表示できます。詳細については、ONTAP 9.13.1 commands.を参照してください。 FabricPoolの階層化ポリシーはボリューム レベルで指定し、次の4つから選択できます。

  • snapshot-only階層化ポリシー(デフォルト)は、アクティブなファイルシステムに関連付けられていないボリュームSnapshotコピーのユーザー データをクラウド階層に移動します。

    階層化の最小クーリング期間は2日です。階層化の最小クーリング期間のデフォルト設定は、advanced権限レベルのvolume createコマンドおよびvolume modifyコマンドで-tiering-minimum-cooling-daysパラメーターを使用して変更できます。ONTAP 9.8以降での有効な値は、2~183日です。ONTAP 9.8より前のバージョンでの有効な値は、2~63日です。

  • auto階層化ポリシー(ONTAP 9.7以降のリリースでのみサポート)は、Snapshotコピーとアクティブなファイルシステムの両方のコールド ユーザー データ ブロックをクラウド階層に移動します。

    アクティブなファイルシステムとSnapshotコピーのどちらについても、階層化の最小クーリング期間のデフォルトは31日で、ボリューム全体に適用されます。

    階層化の最小クーリング期間のデフォルト設定は、advanced権限レベルのvolume createコマンドおよびvolume modifyコマンドで-tiering-minimum-cooling-daysパラメーターを使用して変更できます。有効な値は2~183日です。

  • all階層化ポリシー(ONTAP 9.7以降でのみサポート)は、アクティブなファイルシステムとSnapshotコピーの両方のすべてのユーザー データ ブロックをクラウド階層に移動します。backup階層化ポリシーに代わるものです。 all ボリューム階層化ポリシーは、通常のクライアントトラフィックを持つ読み取り/書き込みボリュームでは使用しないでください。

    階層化スキャンの実行後すぐにクラウド階層にデータが移動され、階層化の最小クーリング期間は適用されません。この設定は変更できません。

  • none階層化ポリシーは、ボリュームのデータを高パフォーマンス階層に保持し、コールド データをクラウド階層に移動しません。

    階層化ポリシーをnoneに設定すると、新しい階層化は実行されません。以前にクラウド階層に移動したボリューム データはそのままクラウド階層に残り、ホットになった時点でローカル階層に自動的に戻ります。

    データがクラウド階層に移動されることはないため、階層化の最小クーリング期間は適用されません。この設定は変更できません。

    階層化ポリシーがnoneに設定されているボリューム内のコールド ブロックは、読み取られた時点でとホットになり、ローカル階層に書き込まれます。

ボリュームの階層化ポリシーは、volume showコマンドの出力で確認できます。FabricPoolで使用されたことがないボリュームの場合、出力にはnoneと表示されます。

FabricPool内のボリュームの階層化ポリシーを変更した場合の影響

ボリュームの階層化ポリシーは、volume modifyを実行することで変更できます。階層化ポリシーを変更することが、データがコールドと認識されてクラウド階層に移動されるまでの時間にどのように影響するかを理解しておく必要があります。

  • 階層化ポリシーをsnapshot-onlyまたはnoneからautoに変更すると、アクティブなファイルシステムの既存のコールド ユーザー データ ブロックがクラウド階層に送信されます。これには、変更前はクラウド階層への送信対象でなかったユーザー データ ブロックも含まれます。

  • 階層化ポリシーを別のポリシーからallに変更すると、階層化スキャンの次回実行時に、アクティブなファイルシステムとSnapshotコピーのすべてのユーザー ブロックがクラウド階層に移動されます。ONTAP 9.8より前のバージョンでは、次の階層化スキャンが実行されるまでブロックが待機する必要がありました。

    移動されたブロックを高パフォーマンス階層に戻すことはできません。

  • 階層化ポリシーをautoからsnapshot-onlyまたはnoneに変更しても、すでにクラウド階層に移動されたアクティブなファイルシステムのブロックは高パフォーマンス階層に戻されません。

    それらのデータを高パフォーマンス階層に戻すには、ボリュームの読み取りが必要になります。

  • ボリュームの階層化ポリシーを変更すると、階層化の最小クーリング期間は常にそのポリシーのデフォルト値にリセットされます。

ボリュームを移動した場合の階層化ポリシーへの影響

  • ボリュームをFabricPool対応アグリゲートに移動したりFabricPool対応アグリゲートから移動しても、別の階層化ポリシーを明示的に指定しないかぎり、ボリュームの階層化ポリシーは元のままです。

    ただし、階層化ポリシーが適用されるのは、ボリュームがFabricPool対応アグリゲート内にある場合のみです。

  • ボリュームの-tiering-minimum-cooling-daysパラメーターの値は、デスティネーションで別の階層化ポリシーを指定しないかぎり、ボリュームを移動しても既存の値が継承されます。

    別の階層化ポリシーを指定した場合は、そのポリシーのデフォルトの階層化の最小クーリング期間が使用されます。デスティネーションがFabricPoolかどうかは関係ありません。

  • アグリゲート間でボリュームを移動し、同時に階層化ポリシーも変更できます。

  • volume moveauto階層化ポリシーに関係する処理を実行する場合、特別な注意が必要になります。

    次の表に、ソースとデスティネーションの両方がFabricPool対応アグリゲートであることを前提に、volume moveautoが関係するポリシーの変更を実行した場合の結果を示します。

    移動するボリュームの階層化ポリシー

    変更後の階層化ポリシー

    volume move実行後の状態

    all

    auto

    すべてのデータが高パフォーマンス階層に移動されます。

    snapshot-onlynone、またはauto

    auto

    データ ブロックがソースと同じデスティネーションの階層に移動されます。

    autoまたはall

    snapshot-only

    すべてのデータが高パフォーマンス階層に移動されます。

    auto

    all

    すべてのユーザー データがクラウド階層に移動されます。

    snapshot-only,autoまたはall

    none

    すべてのデータが高パフォーマンス階層に残ります。

ボリュームをクローニングした場合の階層化ポリシーへの影響

  • ONTAP 9.8以降、クローン ボリュームは常に階層化ポリシーとクラウド読み出しポリシーの両方を親ボリュームから継承します。

    ONTAP 9.8より前のリリースでは、親の階層化ポリシーがallでないかぎり、クローンは親の階層化ポリシーを継承します。

  • 親ボリュームのクラウド読み出しポリシーがneverの場合、クローン ボリュームのクラウド読み出しポリシーをneverにするか、または階層化ポリシーをallにして、対応するクラウド読み出しポリシーをdefaultにする必要があります。

  • 親ボリュームのクラウド読み出しポリシーをneverに変更するためには、クローン ボリュームのクラウド読み出しポリシーがすべてneverでなければなりません。

ボリュームをクローニングするときには、次のベストプラクティスに留意してください。

  • クローンの-tiering-policyオプションとtiering-minimum-cooling-daysオプションは、クローン固有のブロックの階層化のみを制御します。そのため、親FlexVolでは、すべてのクローンと同じまたはそれより少ない量のデータを移動する階層化設定を使用することを推奨します

  • 親FlexVolでは、すべてのクローンの読み出しポリシーと同じまたはそれより多い量のデータを移動するクラウド読み出しポリシーを使用してください。

階層化ポリシーとクラウド移行

FabricPoolのクラウド データ読み出しは階層化ポリシーで制御されます。階層化ポリシーは、読み取りパターンに基づいてクラウド階層から高パフォーマンス階層へのデータの読み出しを決定します。読み取りパターンにはシーケンシャルとランダムがあります。

次の表に、各階層化ポリシーとそのクラウド データ読み出しルールを示します。

階層化ポリシー

読み出し動作

none

シーケンシャル リードとランダム リード

snapshot-only

シーケンシャル リードとランダム リード

auto

ランダム リード

all

データ読み出しなし

ONTAP 9.8以降では、クラウド移行制御オプションcloud-retrieval-policyが、階層化ポリシーで制御されるデフォルトのクラウド移行(読み出し)動作を上書きします。

次の表に、サポートされるクラウド読み出しポリシーとその読み出し動作を示します。

クラウド読み出しポリシー

読み出し動作

default

どのデータを移行するかは階層化ポリシーによって決まるため、cloud-retrieval-policyが「default」の場合はクラウド データの読み出しに変更はありません。このポリシーは、ホストされるアグリゲート タイプに関係なくすべてのボリュームのデフォルトです。

on-read

クライアントによって読み取られたデータはすべてクラウド階層から高パフォーマンス階層に移行されます。

never

クライアントによって読み取られたデータはクラウド階層から高パフォーマンス階層に移行されません。

promote

  • 階層化ポリシーが「none」の場合、すべてのクラウド データがクラウド階層から高パフォーマンス階層に移行されます。

  • 階層化ポリシーが「snapshot-only」の場合、AFSデータが移行されます。

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