ONTAP 9.13

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QoSによるスループットの保証 - 概要

ストレージ サービス品質(QoS)を使用して、重要なワークロードのパフォーマンスが競合するワークロードの影響を受けて低下しないよう設定することができます。競合するワークロードにスループットの上限を設定してシステム リソースへの影響を制限したり、重要なワークロードにスループットの下限を設定することで、競合するワークロードからの要求に関係なく必要な最小スループットを確保したりできます。同じワークロードに対して上限と下限を設定することもできます。

スループットの上限(最大QoS)について

スループットの上限は、ワークロードのスループットを最大IOPS、最大MBps、またはその両方に制限します。次の図では、ワークロード2がワークロード1および3の「Bully」とならないようにスループットの上限が設定されています。

ポリシー グループには、1つ以上のワークロードに対するスループットの上限が定義されます。ワークロードは、ストレージ オブジェクト(個々のボリューム、ファイル、qtree、LUN、あるいはSVM内のすべてのボリューム、ファイル、qtree、LUN)のI/O処理を表します。上限はポリシー グループの作成時に指定できるほか、ワークロードをしばらく監視したあとで指定することもできます。

ワークロードのスループットは、特にスループットが急激に変化した場合、指定された上限を10%までは超過することができます。バースト時には、上限を50%まで超過することができます。バーストは、トークンが150%まで累積した場合に単一ノードで発生します。

スループットの上限の適用前後のQoSを比較するグラフ

スループットの下限(最小QoS)について

スループットの下限は、ワークロードのスループットが最小IOPS、最小MBps、またはその両方を下回らないことを保証する設定です。次の図では、ワークロード1とワークロード3にスループットの下限が設定され、ワークロード2からの要求量に関係なく、最小スループットが確保されています。

これらの例からわかるように、スループットの上限はスループットを直接調整するのに対し、スループットの下限は下限が設定されたワークロードを優先することでスループットを間接的に調整します。

下限はポリシー グループの作成時に指定できるほか、ワークロードをしばらく監視したあとで指定することもできます。

ONTAP 9.13.1以降では、アダプティブ ポリシー グループ テンプレートを使用してSVMレベルでスループットの下限を設定できます。ONTAP 9.13.1より前のリリースでは、スループットの下限が定義されたポリシー グループはSVMに適用できません。

ONTAP 9.7以降では、パフォーマンス容量が不足している場合でもスループットの下限が保証されます。この新しい下限機能は、下限v2と呼ばれます。下限v2では、この保証を満たすために、スループットの下限がないワークロードや下限の設定を超過する作業でレイテンシが高くなる可能性があります。下限v2は、一般のQoSとアダプティブQoSの両方に適用されます。
ONTAP 9.7P6以降では、下限v2の新しい動作を有効または無効にするオプションを使用できます。volume move trigger-cutoverなどの重要な処理の実行中は、ワークロードが指定された下限を下回ることがあります。利用可能な容量が十分にあって重要な処理を実行していないときでも、ワークロードのスループットが指定された下限を5%まで下回ることがあります。下限がオーバープロビジョニングされている場合にパフォーマンス容量が不足すると、一部のワークロードが指定された下限を下回ることがあります。

下限適用前後のQoSスループットを比較する2つのグラフ

共有および非共有のQoSポリシー グループについて

非共有 QoSポリシー グループを使用して、定義したスループットの上限や下限を各メンバーのワークロードに個別に適用するように指定できます。共有 ポリシー グループの動作は、ポリシーのタイプに応じて異なります。

  • スループットの上限については、共有ポリシー グループに割り当てられたワークロードの合計スループットが指定した上限以下でなければなりません。

  • スループットの下限については、共有ポリシー グループを適用できるのは単一のワークロードのみです。

アダプティブQoSについて

通常、ストレージ オブジェクトに割り当てたポリシー グループの値は固定値です。ストレージ オブジェクトのサイズが変わったときは、値を手動で変更する必要があります。たとえば、ボリュームの使用スペースが増えた場合、通常は指定されているスループットの上限も増やす必要があります。

アダプティブQoSでは、ワークロードのサイズの変更に合わせてポリシー グループの値が自動的に調整され、TBまたはGBあたりのIOPSが一定に維持されます。これは、何百何千という数のボリュームを管理する大規模な環境では大きなメリットです。

アダプティブQoSは、主にスループットの上限の調整に使用しますが、下限の管理(ワークロード サイズが増えた場合)に使用することもできます。ワークロードのサイズは、ストレージ オブジェクトに割り当てられたスペースまたはストレージ オブジェクトで使用されているスペースのいずれかで表されます。

使用されているスペースをスループットの下限に使用できます。
  • 割り当てスペースのポリシーでは、ストレージ オブジェクトの公称サイズを基準にIOPSとTB / GBの比率が維持されます。比率が100 IOPS/GBの場合、150GBのボリュームのスループットの上限はボリュームのサイズが変更されないかぎり15,000 IOPSです。ボリュームのサイズが300GBに変更されると、アダプティブQoSによってスループットの上限が30,000 IOPSに調整されます。

  • 使用スペースのポリシー(デフォルト)では、ストレージ効率化適用前の格納されている実際のデータ量を基準にIOPSとTB / GBの比率が維持されます。比率が100 IOPS/GBの場合、100GBのデータが格納された150GBのボリュームのスループットの上限は10,000 IOPSです。使用スペースの量が変わると、アダプティブQoSによって比率が一定になるようにスループットの上限が調整されます。

アプリケーションにI/Oブロック サイズを指定することで、スループット制限をIOPSとMBpsの両方で指定できます。MBpsの制限は、ブロック サイズにIOPS制限を掛けて計算されます。たとえば、32KのI/Oブロック サイズでIOPSの制限が6144 IOPS/TBの場合、MBpsの制限は192MBpsになります。

以下は、スループットの上限と下限の両方に対して想定される動作です。

  • アダプティブQoSポリシー グループにワークロードを割り当てると、上限または下限がただちに更新されます。

  • アダプティブQoSポリシー グループに含まれるワークロードのサイズを変更すると、上限または下限が約5分で更新されます。

更新が実行されるためにはスループットが少なくとも10 IOPS増加する必要があります。

アダプティブQoSポリシー グループは常に非共有です。定義されているスループットの上限または下限は、各メンバー ワークロードに個別に適用されます。

アダプティブ ポリシー グループ テンプレート

ONTAP 9.13.1以降では、SVMにアダプティブQoSテンプレートを設定できます。アダプティブ ポリシー グループ テンプレートを使用すると、SVM内のすべてのボリュームにスループットの下限と上限を設定できます。

アダプティブ ポリシー グループ テンプレートを設定できるのは、SVMの作成後です。ポリシーを設定するには、vserver modifyコマンドで-qos-adaptive-policy-group-templateパラメーターを指定します。

アダプティブ ポリシー グループ テンプレートを設定すると、ポリシーの設定後に作成または移行されたボリュームには、そのポリシーが自動的に適用されます。SVM上の既存のボリュームには適用されません。SVMでポリシーを無効にすると、無効後にSVMに移行または作成されたボリュームにはポリシーが適用されません。アダプティブ ポリシー グループ テンプレートを無効にしても、それまでにそのポリシーが適用されていたボリュームに変更はなく、引き続き同じポリシーが適用されます。

詳細については、「アダプティブ ポリシー グループ テンプレートの設定」を参照してください。

全般的なサポート

次の表に、スループットの上限、スループットの下限、およびアダプティブQoSのサポート状況を示します。

リソースまたは機能 スループットの上限 スループットの下限 スループットの下限v2 アダプティブQoS

ONTAP 9バージョン

すべて

9.7以降

9.7以降

9.7以降

プラットフォーム

すべて

  • ETERNUS AX

  • AX1100

  • ETERNUS AX

  • AX1100

すべて

プロトコル

すべて

すべて

すべて

すべて

FabricPool

〇(階層化ポリシーが「none」に設定され、ブロックがクラウドにない場合)

〇(階層化ポリシーが「none」に設定され、ブロックがクラウドにない場合)

×

SnapMirror Synchronous

×

×

スループットの上限がサポートされるワークロード

次の表に、スループットの上限がサポートされるワークロードをONTAP 9のバージョン別に示します。ルート ボリューム、負荷共有ミラー、およびデータ保護ミラーはサポートされません。

ワークロード - 上限 ONTAP 9.7 ONTAP 9.8以降

ボリューム

ファイル

LUN

SVM

FlexGroupボリューム

qtree *

×

ポリシー グループへの複数のワークロードの割り当て

非共有のポリシー グループ

*ONTAP 9.8以降では、NFSが有効なFlexVolおよびFlexGroupボリュームのqtreeでNFSアクセスがサポートされます。ONTAP 9.9.1以降では、SMBが有効なFlexVolおよびFlexGroupボリュームのqtreeでSMBアクセスもサポートされます。

スループットの下限がサポートされるワークロード

次の表に、スループットの下限がサポートされるワークロードをONTAP 9のバージョン別に示します。ルート ボリューム、負荷共有ミラー、およびデータ保護ミラーはサポートされません。

ワークロード - 下限 ONTAP 9.7 ONTAP 9.8~9.13.0 ONTAP 9.13.1以降

ボリューム

ファイル

LUN

SVM

×

×

FlexGroupボリューム

qtree *

×

ポリシー グループへの複数のワークロードの割り当て

非共有のポリシー グループ

*ONTAP 9.8以降では、NFSが有効なFlexVolおよびFlexGroupボリュームのqtreeでNFSアクセスがサポートされます。ONTAP 9.9.1以降では、SMBが有効なFlexVolおよびFlexGroupボリュームのqtreeでSMBアクセスもサポートされます。

アダプティブQoSがサポートされるワークロード

次の表に、アダプティブQoSがサポートされるワークロードをONTAP 9のバージョン別に示します。ルート ボリューム、負荷共有ミラー、およびデータ保護ミラーはサポートされません。

ワークロード - アダプティブQoS ONTAP 9.7~9.13.0 ONTAP 9.13.1以降

ボリューム

ファイル

LUN

SVM

×

FlexGroupボリューム

ポリシー グループへの複数のワークロードの割り当て

非共有のポリシー グループ

ワークロードとポリシー グループの最大数

次の表に、ワークロードとポリシー グループの最大数をONTAP 9のバージョン別に示します。

ワークロード ONTAP 9.7以降

クラスタあたりの最大ワークロード

40,000

ノードあたりの最大ワークロード

40,000

ポリシー グループの最大数

12,000

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