エフサステクノロジーズ株式会社

本ページの製品は2024年4月1日より、エフサステクノロジーズ株式会社に統合となり、順次、切り替えを実施してまいります。一部、富士通表記が混在することがありますので、ご了承ください。

ONTAP 9 マニュアル ( CA08871-402 )

to English version

仮想IP(VIP)LIFの設定

一部の次世代データセンターでは、サブネットをまたぐLIFのフェイルオーバーを必要とする、ネットワーク レイヤー3のメカニズムが使用されています。VIPデータLIFおよび関連するルーティング プロトコルであるBorder Gateway Protocol(BGP)がサポートされ、この次世代ネットワークでONTAPを使用することができます。

タスク概要

VIPデータLIFは、いずれのサブネットにも属さない、同じIPspace内のBGP LIFをホストするすべてのポートから到達可能なLIFです。VIPデータLIFを使用すると、ホストは個別のネットワーク インターフェイスに依存しなくなります。複数の物理アダプターでデータ トラフィックが処理されるため、すべての負荷が単一のアダプターと関連するサブネットに集中することはありません。VIPデータLIFの存在は、ルーティング プロトコルであるBorder Gateway Protocol(BGP)を通じてピア ルーターに通知されます。

VIPデータLIFには次の利点があります。

  • ブロードキャスト ドメインやサブネットをまたいだLIFの移動:各VIPデータLIFの現在の場所がBGPを通じてルーターに通知されるため、VIPデータLIFはネットワークのどのサブネットにもフェイルオーバーできます。

  • アグリゲート スループット:VIPデータLIFは、同時に複数のサブネットまたはポートに対してデータを送受信できるため、個々のポートの帯域幅を超える総スループットをサポートできます。

Border Gateway Protocol(BGP)のセットアップ

VIP LIFを作成する前にBGPをセットアップする必要があります。BGPは、VIP LIFの存在をピア ルーターに通知するためのルーティング プロトコルです。

ONTAP 9.9.1以降では、VIP BGPの設定を簡単にするために、BGPピア グループを使用したデフォルト ルートの自動化が導入されています。

ONTAPは、同じサブネット上にあるBGPピアをネクストホップ ルーターとして使用して、デフォルト ルートを簡単に特定できます。この機能を使用するには、-use-peer-as-next-hop属性をtrueに設定します。デフォルト値はfalseです。

静的ルートが設定されている場合は、これらの自動デフォルト ルートよりも優先されます。

開始する前に

設定されたAutonomous System Number(ASN)のBGP接続をBGP LIFから受け入れるように、ピア ルーターを設定しておく必要があります。

ONTAPはルーターから着信するルート通知を処理しないため、ルートの更新をクラスタに送信しないようにピア ルーターを設定する必要があります。
タスク概要

BGPをセットアップする際には、必要に応じてBGP設定、BGP LIF、BGPピア グループを作成します。あるノードでBGPピア グループが最初に作成されると、デフォルト値を使用してデフォルトのBGP設定が自動的に作成されます。BGP LIFは、ピア ルーターとのBGP TCPセッションを確立するために使用されます。ピア ルーターから見ると、BGP LIFはVIP LIFに到達するための次のホップです。BGP LIFではフェイルオーバーは無効になります。BGPピア グループは、グループのIPspaceに属するすべてのSVMのVIPルートを通知します。

ONTAP 9.8以降では、network bgp peer-groupコマンドに次のフィールドが追加されています。

  • -asn-prepend-type

  • -asn-prepend-count

  • -community

これらのBGP属性を使用して、BGPピア グループのASパスとコミュニティを設定できます。

ONTAP 9.9.1以降では、次のフィールドが追加されています。

  • -asnまたは-peer-asn(4バイト値)
    属性自体は以前からありましたが、4バイトの整数を使用するようになりました。

  • -med

  • -use-peer-as-next-hop

パスの優先順位付けでは、Multi-Exit Discriminator(MED)を使用して高度なルート選択を行うことができます。MEDはBGP更新メッセージのオプションの属性で、トラフィックに最適なルートを選択するようルーターに指示します。MEDは32ビットの符号なし整数(0~4294967295)で、値が小さい方が優先されます。

ONTAPは上記のBGP属性をサポートしていますが、必ずしもルーターに適用する必要はありません。ルーターでサポートされる属性を確認し、それに応じてBGPピア グループを設定することを強く推奨します。詳細については、ルーターに付属のBGPのドキュメントを参照してください。
手順
  1. advanced権限レベルにログインします。

    set -privilege advanced

  2. オプション:次のいずれかの操作を実行して、クラスタのBGP設定を作成するか、デフォルトのBGP設定を変更します。

    1. BGP設定を作成する場合:

      network bgp config create -node {node_name | local} -asn asn_integer -holdtime
      hold_time -routerid local_router_IP_address

      2バイトのASNの例:

      network bgp config create -node node1 -asn 65502 -holdtime 180 -routerid 1.1.1.1

      4バイトのASNの例:

      network bgp config create -node node1 -asn 85502 -holdtime 180 -routerid 1.1.1.1
    2. デフォルトのBGP設定を変更する場合:

      network bgp defaults modify -asn asn_integer -holdtime hold_time
      network bgp defaults modify -asn 65502
      • asn_integerにはASNを指定します。ONTAP 9.8以降では、BGPのASNに2バイトの正の整数を指定できます。これは16ビットの数値(有効な値は1~65534)です。ONTAP 9.9.1以降では、BGPのASNに4バイトの正の整数(1~4294967295)を指定できます。デフォルトのASNは65501です。ASN 23456は、4バイトのASN機能をサポートしていないピアとのONTAPセッション確立用に予約されています。

      • hold_timeには保持時間(秒)を指定します。デフォルト値は180です。

  3. システムSVM用のBGP LIFを作成します。

    network interface create -vserver system_svm -lif lif_name -service-policy default-route-announce -home-node home_node -home-port home_port -address ip_address -netmask netmask

    BGP LIFには、default-route-announceサービス ポリシーのほか、「management-bgp」サービスを含むカスタム サービス ポリシーを使用できます。

    network interface create -vserver cluster1 -lif bgp1 -service-policy default-route-announce -home-node cluster1-01 -home-port e0c -address 10.10.10.100 -netmask 255.255.255.0
  4. リモート ピア ルーターとのBGPセッションを確立するために使用するBGPピア グループを作成し、ピア ルーターに通知するVIPルート情報を設定します。

    例1:自動デフォルト ルートを使用しないピア グループの作成

    この場合、管理者がBGPピアへの静的ルートを作成する必要があります。

    network bgp peer-group create -peer-group group_name -ipspace ipspace_name -bgp-lif bgp_lif -peer-address peer-router_ip_address -peer-asn 65502 -route-preference integer
    -asn-prepend-type <ASN_prepend_type> -asn-prepend-count integer -med integer -community BGP community list <0-65535>:<0-65535>
    network bgp peer-group create -peer-group group1 -ipspace Default -bgp-lif bgp1 -peer-address 10.10.10.1 -peer-asn 65502 -route-preference 100 -asn-prepend-type local-asn -asn-prepend-count 2 -med 100 -community 9000:900,8000:800

    例2:自動デフォルト ルートを使用したピア グループの作成

    network bgp peer-group create -peer-group group_name -ipspace ipspace_name -bgp-lif bgp_lif -peer-address peer-router_ip_address -peer-asn 65502 -use-peer-as-next-hop true -route-preference integer -asn-prepend-type <ASN_prepend_type> -asn-prepend-count integer -med integer -community BGP community list <0-65535>:<0-65535>
    network bgp peer-group create -peer-group group1 -ipspace Default -bgp-lif bgp1 -peer-address 10.10.10.1 -peer-asn 65502 -use-peer-as-next-hop true -route-preference 100 -asn-prepend-type local-asn -asn-prepend-count 2 -med 100 -community 9000:900,8000:800

仮想IP(VIP)データLIFの作成

VIPデータLIFの存在は、ルーティング プロトコルであるBorder Gateway Protocol(BGP)を通じてピア ルーターに通知されます。

開始する前に
  • BGPピア グループをセットアップし、LIFを作成するSVMのBGPセッションをアクティブにしておく必要があります。

  • SVMの発信VIPトラフィック用に、BGPルーターまたはBGP LIFのサブネット内にあるその他のルーターへの静的ルートを作成しておく必要があります。

  • マルチパス ルーティングをオンにして、発信VIPトラフィックが使用可能なすべてのルートを使用できるようにしておく必要があります。

    マルチパス ルーティングを有効にしない場合は、すべての発信VIPトラフィックが1つのインターフェイスから送信されます。

手順
  1. VIPデータLIFを作成します。

    network interface create -vserver svm_name -lif lif_name -role data -data-protocol
    {nfs|cifs|iscsi|fcache|none|fc-nvme} -home-node home_node -address ip_address -is-vip true

    network interface createコマンドでホーム ポートを指定しなかった場合は、VIPポートが自動的に選択されます。

    作成されたVIPデータLIFは、デフォルトで、各IPspaceに対してシステムで作成されるブロードキャスト ドメイン「Vip」に属します。VIPブロードキャスト ドメインを変更することはできません。

    VIPデータLIFには、IPspaceのBGP LIFをホストするすべてのポートから同時に到達できます。ローカル ノードにVIPのSVM用のアクティブなBGPセッションがない場合は、VIPデータLIFはそのSVM用のBGPセッションが確立されているノード上のVIPポートにフェイルオーバーします。

  2. VIPデータLIFのSVMに対してBGPセッションがupステータスになっていることを確認します。

    network bgp vserver-status show
    
    Node        Vserver  bgp status
    	    ----------  -------- ---------
    	    node1       vs1      up

    あるノードでSVMのBGPステータスがdownになっている場合は、VIPデータLIFはSVMのBGPステータスがupになっている別のノードにフェイルオーバーします。すべてのノードでBGPステータスがdownになっている場合は、VIPデータLIFをどこでもホストできず、LIFステータスはdownになります。

BGPの管理用コマンド

network bgpコマンドを使用してONTAPでのBGPセッションを管理できます。

BGP設定の管理

実行する処理

使用するコマンド

BGP設定を作成する

network bgp config create

BGP設定を変更する

network bgp config modify

BGP設定を削除する

network bgp config delete

BGP設定を表示する

network bgp config show

VIP LIFのSVMに対するBGPステータスを表示する

network bgp vserver-status show

BGPのデフォルト値の管理

実行する処理

使用するコマンド

BGPのデフォルト値を変更する

network bgp defaults modify

BGPのデフォルト値を表示する

network bgp defaults show

BGPピア グループの管理

実行する処理

使用するコマンド

BGPピア グループを作成する

network bgp peer-group create

BGPピア グループを変更する

network bgp peer-group modify

BGPピア グループを削除する

network bgp peer-group delete

BGPピア グループの情報を表示する

network bgp peer-group show

BGPピア グループの名前を変更する

network bgp peer-group rename

Top of Page