FPolicyサーバーがSMBサーバー上にあるファイルに対してHSMを提供するように構成されている場合は、ポリシーベースのファイル移行が行われます。この場合、ファイルはセカンダリーストレージ上にオフライン格納され、スタブファイルのみがプライマリーストレージ上に残ります。たとえクライアントからは通常のファイルのように見えても、スタブファイルは実際には元のファイルと同じサイズのスパースファイルです。スパースファイルは、SMBのオフラインビットが設定されており、セカンダリーストレージに移行された実際のファイルを参照しています。

通常は、オフラインファイルに対する読み取り要求が届くと、プライマリーストレージ上への要求されたコンテンツのリコール（呼び戻し）を行ったうえで、プライマリーストレージを介してそのコンテンツにアクセスする必要があります。データをプライマリーストレージにリコールする必要があることから、いくつかの好ましくない影響が生じます。特に、コンテンツをリコールしてから要求に応じる必要があるためにクライアント要求に対する遅延が大きくなる点と、プライマリーストレージで必要となる領域の使用量がリコールされるファイルのサイズだけ増える点が挙げられます。

FPolicyのパススルーリードを使用すると、移行されたオフラインファイルに対する読み取りアクセスをHSMサーバー（FPolicyサーバー）から提供できます。セカンダリーストレージシステムからプライマリーストレージシステムにファイルをリコールする必要はありません。プライマリーストレージにファイルをリコールして戻す代わりに、読み取り要求をセカンダリーストレージから直接処理できます。

FPolicyのパススルーリード処理では、コピーオフロード（ODX）はサポートされません。

パススルーリードは、次のような利点を提供してユーザービリティーを向上します。

要求されたデータをリコールするための十分な領域がプライマリーストレージになくても、読み取り要求を処理できます。
スクリプトまたはバックアップソリューションで多数のオフラインファイルへのアクセスが必要になる場合など、データのリコールが急増した場合でも容量やパフォーマンスの管理を適切に行うことができます。
Snapshotコピー内のオフラインファイルに対する読み取り要求を処理できます。

Snapshotコピーは読み取り専用なので、スタブファイルがSnapshotコピー内にある場合、FPolicyサーバーは元のファイルをリストアできません。パススルーリードを使用すると、この問題は解消されます。
セカンダリーストレージ上のファイルへのアクセスによって読み取り要求が処理されるタイミングや、オフラインファイルをプライマリーストレージにリコールするタイミングを制御するポリシーを設定できます。

たとえば、オフラインファイルをプライマリーストレージ上に移行し直すまでの指定された期間内にオフラインファイルにアクセスできる回数を指定するポリシーをHSMサーバー上に作成できます。このタイプのポリシーにより、滅多にアクセスされないファイルのリコールを回避できます。

FPolicyパススルーリードが有効になっている場合の読み取り要求の管理方法

Storage Virtual Machine（SVM）およびFPolicyサーバー間の接続を最適な形で設定できるように、FPolicyパススルーリードが有効になっている場合の読み取り要求の管理方法を理解しておく必要があります。

FPolicyパススルーリードが有効になっている場合にSVMがオフラインのファイルに対する要求を受け取ると、FPolicyによって標準の接続チャネル経由でFPolicyサーバー（HSMサーバー）に通知が送信されます。

通知を受け取ったあと、FPolicyサーバーはその通知で送信されたファイルパスからデータを読み取り、要求されたデータをSVMおよびFPolicy間に確立されたパススルーリード特権データ接続を介してSVMに送信します。

このデータの送信後、FPolicyサーバーは読み取り要求にALLOW（許可）またはDENY（拒否）で応答します。読み取り要求が許可されたか拒否されたかによって、ONTAPは要求された情報またはエラーメッセージをクライアントに送信します。

ONTAP 9.13

FPolicyパススルー リードによる階層型ストレージ管理の利便性向上

FPolicyパススルー リードが有効になっている場合の読み取り要求の管理方法

FPolicyパススルーリードによる階層型ストレージ管理の利便性向上

FPolicyパススルーリードが有効になっている場合の読み取り要求の管理方法